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米国商業不動産業界にも迫りつつある崩壊(ディスラプション)

執筆者の写真: 菊池 邦夫菊池 邦夫

現在ZillowをはじめとしてiBuyer達が住宅不動産業界で起こしているディスラプション(崩壊)が続いている。私は、同様なことが商業不動産の投資市場に影響を及ぼすのは少し先であると甘くみていた。しかし、現実は崩壊はすでに始まっていると言えそうだ。私は今自分の不勉強を恥じている。


私が崩壊がすぐには起こらないと考えた理由はこうだ。

  1. 商業不動産ブローカーは中間年齢層が60歳という熟練経験者の集合体であるので専門性が高く、エントリーバリアが高いこと。

  2. 商業不動産ブローカー数は業界で圧倒的に少なく、物件情報もMLSのような一律の情報共有プラットフォームがなかったので、住宅業界で起こった様なマス・アプローチはそぐわない。これもエントリーバリアが高い理由の2つ目。

  3. 仮にエンドユーザーが不動産情報を物理的に手に入れられても、多くの情報と分析を駆使して最終的に大型売買の決断をしてゆくのは、熟練した経験者のアドバイスが必要である。だから、信頼できる商業不動産ブローカーは無くならない。

などを考えていたのである。


しかし、ここ数年で私の考えを時代遅れとする数々の動きが出てきた。以下の図は商業不動産の崩壊を進めているプレーヤー達の代表格である。この中の代表がアマゾンだ。アマゾンは全米最大のテナントでもあり、同様にいつでも最大の不動産オーナーになれる実力を持っている。また、世界中どこでも最大の雇用者であり、社員数を考えれば住宅を含む不動産への影響は計り知れない。高級スーパーのホールフーズを買収したが、隣接してアマゾン・ロッカーを配備すると、仕事の行き帰りに荷物をピックアップするようになるなど、ミレニアル世代の生活様式を一変させ始めている。今や商業不動産業界にも最も影響を与えるプレーヤーと言える。


もう一つはテンXと呼ばれる商業物件のオークション専門プラットフォームの登場だ。銀行は物件差し押さえ後の処分をもはや自分たちでは行わず、テンXの査定分析から売却処分までの一気通貫サービスを利用しようとし始めている。



上記に加えて、ギグエコノミーがたくさんの個別知見に秀でたフリーランサー達を動員し、さらにオンラインによる商業不動産専門の鑑定会社もできた。もはや、経験の深い商業不動産ブローカーの独断場であったテクニックが、分解され、様々な新しいサービス専門会社にとって代わられようとする動きが出ている。

従来型の大手商業不動産会社は、ブッティック型の会社を買収しつつ、さらにグループとして専門性・集中を高めてゆく。コンサルティング会社も不動産戦略提案からの切り口で入り込み、結果としてこれまで商業不動産ブローカーが果たしてきた不動産コンサルティングの役割を駆逐しようとしている。

これまで高い存在意義を発揮してきた商業不動産ブローカー達はいったいどこへ行けば良いのだろうか? (次回へ続く)

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